学術情報流通に関連する情報
研究成果の公開と利活用 〈 学習編 〉
プレダトリージャーナル
プレダトリージャーナル(Predatory journal)とは、オープンアクセスジャーナル(OA誌)の仕組みを悪用し、著者が支払う論文投稿料(APC:Article Processing Charge)を不正に得ようとする悪質な学術誌のことです。日本では「ハゲタカジャーナル」や「粗悪学術誌」などと呼ばれることもあります。
これらのジャーナルは、利益を優先するあまり、適切な査読を行わない、あるいは査読が形式的で質が保証されていないといった問題を抱えています。また、誤解を招くようなインパクト指標(本来のインパクトファクターとは異なる指標や数値)を用いて研究者を誘導するケースもあります。
プレダトリージャーナルに論文が掲載されるデメリット
このようなプレダトリージャーナルに論文を掲載すると、研究の信頼性が損なわれるだけでなく、研究者自身の評価やキャリアにも悪影響を及ぼす可能性があります。金銭的な被害にとどまらず、学術界全体の信頼性にも関わる重要な問題です。
- プレダトリージャーナルに論文が掲載されていることで、著者や著者の所属研究機関の評価・信頼が損なわれる
- 不当に高額な料金請求など投稿料に関わるトラブルが発生する
- 投稿後にプレダトリージャーナルであると気づいても、論文の撤回が認められず、他の雑誌へ再度投稿し直すことができなくなる
- 論文への安定したアクセスが保証されておらず、突然閲覧できなくなる可能性がある
- 質の保証されていない論文が出回るようになるため、査読論文や学術雑誌全体の信頼に悪影響を及ぼす
- 会費徴収が目的の国際会議等への参加を勧誘されることもある
プレダトリージャーナル対策
「プレダトリージャーナルはこれらの雑誌です」、「これらの出版社はプレダトリージャーナルです」ということを、Beall’s Listなどのリストを用いて、二値的に判断することは困難です。なぜなら、プレダトリージャーナルの創刊や廃刊のスピードが非常に速く、またその手口も多様化し、日々変化しているためです。また、一時的に問題のある学術誌と見なされていたものでも、運営の改善を重ねることで健全な学術誌へと成長する可能性があります。一方で、もともと適切に運営されていたジャーナルが、時間の経過とともに質の低下や運営方針の変更によりプレダトリージャーナルに変貌する可能性もあります。
そのため、特定のリストに掲載されているかどうかだけで判断するのではなく、最新の情報をもとに自分が投稿したい雑誌をチェックすることが重要です。
投稿する前の注意ポイント
- Think Check Submit (日本語版はこちら)
リストにしたがって投稿先の雑誌の信頼性をチェックすることができます。 - 井出和希, 中山健夫「その学術誌、大丈夫?」
学術誌に関する「大丈夫?」の注意ポイントがスペクトラム状の表になっています。
投稿予定の雑誌が信頼性の高いデータベースに収録されているかどうか
- DOAJ(Directory of Open Access Journals)
OA誌の検索が無料でできるデータベースです。採録には厳しい審査基準が設けられています。
投稿予定の雑誌の出版社が以下の団体に登録されているか
- OASPA(Open Access Scholarly Publisher’s Association)
オープンアクセス学術出版社協会 - COPE(Committee on Publication Ethics)
出版規範委員会 ⇒メンバー検索ページ
[参考]
投稿先学術雑誌の評価方法 | 大阪大学附属図書館
井出和希 学術誌・データのオープン化、質、逃れられない曖昧さと実践的アプローチ (研究大学コンソーシアム「学術情報流通に関する連続セミナー」第6回, 2024年11月8日 における発表資料)
InterAcademy Partnersh / (訳) 井出和希, 林和弘, ホーク・フィリップ, 清水智樹「<翻訳>粗悪な学術誌・学術集会を拡げないために」 増補版, 2023