1. 研究計画とデータマネジメント
  2. 研究データ管理計画(DMP)とは

研究データ管理計画(DMP)とは

研究計画とデータマネジメント 〈 学習編 〉

「研究プロジェクト等における研究データの取り扱いを定めるものであり、具体的にはデータの種類、フォーマット、アクセス及び共有のための方針、研究成果の保管に関する計画などについて記載されるもの。」

引用:文部科学省科学技術・学術審議会学術分科会学術情報委員会(2016, 2, 26)「学術情報のオープン化の推進について(審議まとめ)」, p.17.

研究データのライフサイクル

研究データのライフサイクル

DMPを適切に作成することで、研究の透明性や効率性が向上

  • DMPは研究データの管理・共有計画を明確に し、再現性を確保する
  • データが透明であることは、他の研究者による検証や活用を促進する
  • データの種類、保存場所、公開時期を事前に整理することで、研究成果の公開をスムーズに行える
  • データが消失せず長期保存と共有の促進し、他の研究でデータが再利用・利活用される可能性を高める

DMP作成が求められる代表的な競争的資金の例

科研費における研究データの管理・利活用等について

    • 「科研費での研究の実施にあたっては、研究データの管理計画書であるデータマネジメントプラン(DMP)を活用し、研究データの適切な管理や利活用の促進に努めていただきます。」
    • 「研究者は、オープン・アンド・クローズ戦略に従いDMPを策定し、それに基づいてデータの公開・共有を行ってください。」
    • 科学研究費助成事業データマネジメントプラン(DMP)〔作成上の注意〕

    AMEDにおける研究開発データの取扱いに関する基本方針、AMED研究データ利活用に係るガイドライン、データマネジメントプラン

      • 「(省略)研究開発データの種類、保存場所等、データの管理責任者、データシェアリングその他のデータ利活用の方針等を記載する「データマネジメントプラン(DMP)」(以下、「DMP」という。)を委託研究開発契約等の締結時に提出することを義務化している。」
      • 「DMP には、AMEDが委託者となる委託研究開発契約等において、どのようなデータが創出、取得又は収集され、誰がどこに保有しているのかを記載することが求められる。」
      • AMED 研究データ利活用に係るガイドライン2.1 版

      研究データ管理とDMPの関係

      研究の進行段階DMPにおける対応
      研究の初期段階DMPの作成
      ・研究目的に応じたデータの管理計画の策定
      ・データの収集、保存、共有、公開戦略を定義
      研究の途中段階DMPの実行・更新
      ・計画に沿ってデータの収集・管理を実施
      ・必要に応じてDMPを更新(データ形式変更、取得量の増加、公開方針変更など)
      研究の終了後DMPの最終評価・反映
      ・データの整理、アーカイブ、公開の最終決定
      ・DMPに基づき計画達成状況を評価し、今後の研究へのフィードバック

      DMPは静的な文書ではなく、研究進行に応じて更新される「Living Document」であるべき
      「なお、研究開発の進展や外部環境の変化により、データ利活用の範囲・内容等を修正 する必要が生じる場合も考えられるが、受託者は、原則年度毎の契約時又は 変更の必要性が生じた際に適宜DMPの見直し、改訂を行うことができ、AMED は必要に応じて助言をした上で改訂を承認することができる。」(AMED 研究データ利活用に係るガイドライン2.1 版

      DMP作成支援ツールの例

      ツール特徴
      研究マネジメント総合支援システム大阪大学で開発されたオンラインDMP作成支援プラットフォーム(即時OA等にも対応)
      GakuNin RDM日本で開発された大学・研究機関向けデータ管理基盤(NII RDCを構成するデータ基盤のひとつ)
      DMP Tool米国で開発されたオンラインDMP作成支援ツール
      DMP Online英国で開発されたオンラインDMP作成支援ツール

      研究データ管理計画(DMP)を作成時にポイント

      1. 研究プロジェクト概要

      プロジェクトの概要や期間を明確化することで、計画の全体像が把握できる
      〈例〉

      • プロジェクト名:遺伝子編集技術の応用研究
      • 期間:2024年4月–2027年3月
      1. 責任者体制の明確化

      データ管理責任者と分担者の役割を明確にする
      〈例〉

      • 研究代表者:阪大太郎(大阪大学)
      • データ管理者:阪大花子(国立遺伝学研究所)
      1. 研究データの分類・保存

      【管理対象データ】

      データを分類(破棄データ、共有データ、公開データ、非公開データなど)し、管理すべきデータを把握する
      〈分類例〉

      • 共有データ(チーム内解析用データ)
      • 公開データ(観測データ)
      • 非公開データ(被験者の個人情報)

      データの種類や取得方法を明確化する
      〈分類例〉

      • 原始データ(実験結果の生データ)
      • 加工データ(グラフや統計分析に利用されたデータ)
      • データの種類・取得方法(DNA配列データ、化学構造データ、次世代シーケンサーによる解析)

      研究データの名称は具体的で中身が分かる名称を記載する
      〈NG例〉

      • 「○○学会用データ」や「報告資料」などの曖昧な名称

      データ保存先を明確化する
      〈例〉

      • 公開データ(リポジトリで保存)、共有データ(GakuNin RDM, グループ内サーバで管理)
      1. 研究データの共有・公開計画

      データ公開の有無や場所、公開予定時期を設定する

      〈公開場所の例〉

      • 分野別リポジトリ(例 天文学データセンター)
      • 機関リポジトリ(例 大阪大学学術情報庫OUKA, JAIRO Cloud)

      〈公開時期〉

      • データ公開は論文発表後すみやかに(6ヶ月以内)に行うことが推奨される

      特許申請や機密データのエンバーゴ期間の設定

      • 特許申請や論文発表準備のため、一定期間データを非公開にする
      • AMEDではデータ共有のエンバーゴ期間の設定と例外が規定されている

      AMED 研究データ利活用に係るガイドライン 2.1 版
      「各大学・研究機関・企業等による研究開発のインセンティブや国益を保つという観点からは、一部の研究開発データについては少なくとも一定期間はデ ータシェアリングを行わないことを認めることも、オープン・アンド・クローズ戦略の観点から重要である。」
      「【例外猶予期間】~省略」

      1. DMPの更新

      DMPは「Living Document」として、研究の進行に応じて更新する

      AMED 研究データ利活用に係るガイドライン 2.1 版
      「研究開発の進展や外部環境の変化により、データ利活用の範囲・内容等を修正する必要が生じる場合も考えられるが、受託者は、原則年度毎の契約時又は変更の必要性が生じた際に適宜DMPの見直し、改訂を行うことができ、AMEDは必要に応じて助言をした上で改訂を承認することができる。」
      科学研究費助成事業データマネジメントプラン(DMP)〔作成上の注意〕
      「DMPの変更があった場合には、適宜更新の上、適切に保管すること。」

      〈更新例〉

      • 研究の進捗に応じてデータの保存場所を変更したとき
      • 新たなデータ収集手法の導入したとき
      • 保存場所が突然利用不可になった場合のバックアップ計画を策定したとき
      • データの保存・共有ポリシーを変更したとき
      • 管理者や関係者の連絡先情報の更新が必要なとき
      1. オープンサイエンスの推進

      FAIR原則の推進

      • Findable(見つけられる):メタデータを充実させ、DOIを付与。
      • Accessible(アクセス可能):信頼できるリポジトリに保存し、アクセス性を確保。
      • Interoperable(相互運用性):国際標準フォーマット(例 CSV, XML)を使用。
      • Reusable(再利用可能):明確なライセンス(例 CC-BY)を付与。

      FAIR原則を実践することは、同時にデータを戦略的に保護する方法を実践的に学ぶことにもつながります。

      1. 機微情報(センシティブデータ)の取り扱い
      • 医療データ 患者の診断結果や治療記録、被験者の健康診断データ
      • 個人情報 調査回答者の名前や住所 など

      〈取扱いの具体例〉

      個人情報を含むデータの匿名化処理(例 識別番号の付与、個人情報の削除)やデータ収集時に被験者からの同意取得

      AMED 研究データ利活用に係るガイドライン2.1 版
      「AMEDからの支援(委託又は補助)を受けた研究開発の成果として生み出されるデータには、患者の個人情報が含まれることがあり、関係法令、倫理指針等に基づく個人情報の保護やプライバシーの保護を含めた、適切なデータのシェアリングを実施しなければならない。」
      科学研究費助成事業データマネジメントプラン(DMP)〔作成上の注意〕
      「5. 「機微情報がある場合の取り扱い方針」欄には、データの保存や共有に関する同意、匿名化 処理、センシティブデータの扱い等を記入すること。」

      1. セキュリティ対策の強化やオープン・アンド・クローズ戦略の採用
      • アクセス制限を実施し、暗号化技術を使用してデータを保護する
      • 公開・共有・非公開の判断には国益や産業競争力を考慮する

      研究者からよくある質問

      DMPを作る時間がない場合、最低限どこを押さえればよいか?

      DMP作成に時間をかけられない場合でも、以下の3つの項目だけは必ず記録してください。
      最低限押さえるべきDMPの3要素
      これらを簡潔に記載することで、DMPの基本要件を満たし、あとで詳細を追加する余地を残せます。

      • DMPは「Living Document」(生きた文書)として研究の進行に応じて更新可能(AMED, 2021)。
      項目記録例
      ① 研究データの種類と保存先CSVデータ、画像データをONIONに保存
      ② データ公開・共有の計画論文発表後6か月以内にZenodoで公開
      ③ データ管理の責任者阪大太郎(大阪大学) 

      データ公開をしたくない場合、どのような選択肢があるか?

      公開を避けたい場合、以下の3つの方法を検討してください。
      データ非公開のための3つの選択肢

      方法詳細
      ① エンバーゴ期間を設定「論文発表後12か月間非公開(特許申請中)」など、一定期間データを公開せずに保留する。
      ② 限定公開(アクセス制限)「共同研究者のみにデータ共有」「機関リポジトリで学内限定公開」など、アクセス制限を設定する。
      ③ メタデータのみ公開データ本体は非公開とし、データの概要(メタデータ)だけを公開することで研究の透明性を確保する。
      • 特許出願予定のデータは、公開による権利喪失を防ぐためにエンバーゴ期間を設定。
      • 倫理的に機微なデータ(患者データ等)は、適切な匿名化を行った上で共有方法を慎重に決定。
        ・AMED「研究データ利活用に係るガイドライン 2.1版」では、エンバーゴ期間の設定や例外の適用を認めている。
        ・内閣府「オープンデータ政策」でも、機密性が高いデータは適切なクローズ戦略が必要とされている。

      DMPの内容を途中で変更する必要が出たら、どうすればよいか?

      研究が進み、DMPの内容を変更する必要が出た場合、以下の3ステップで更新してください。
      DMP更新のための3ステップ

      ステップ具体例
      ① 変更内容を明確にする「データの保存場所をクラウド(GakuNin RDM)に移行する」など、変更点を特定。
      ② 変更履歴を記録する更新日と変更点をDMPに明記(例:2025年1月15日、保存先を更新)
      ③ 今後の更新計画を策定する四半期ごとにDMPを見直し、研究メンバーと合意形成
      • DMPは「Living Document」として管理し、必要に応じて更新するのが理想的。
      • 変更内容は研究チーム内で共有し、適切に記録を残すことが重要。
        ・AMED「研究データ利活用に係るガイドライン 2.1版」では、研究進展や環境変化に応じてDMPを適宜見直すことが推奨されている。
        ・科学研究費助成事業の「DMP作成上の注意」でも、DMPの変更があった場合の更新・適切な保管が求められている。

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